沖縄県下唯一の国立大学として、先端技術を担えるIT人材の育成に注力する琉球大学。同大学の工学部では、実際のサーバ環境の構築・運用スキルを身につけるため180台のサーバを導入、学生一人ひとりにサーバを一台ずつ割り当てられる環境を整備した。その際に採用されたのが、NECのExpress5800シリーズ「1Uハーフサーバ」だ。懸念されていた電源容量や消費電力、 スペースの問題を解決し、導入後も安定稼動を続けている。
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琉球大学 工学部 情報工学科 准教授 河野 真治氏 |
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琉球大学 工学部 情報工学科 助教 長田 智和氏 |
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琉球大学 工学部 情報工学科 助教 當間 愛晃氏 |
高度なITスキルを有する人材をどう育成していくか――。これは、多くの企業が持つ共通の悩みだといえるだろう。ITがビジネスに直結した存在になる一方で、IT基盤が高度化・複雑化し、ITを担う人材がビジネスの明暗を分ける1つの要素となっているからだ。
こうしたニーズを受け、先端技術を担えるIT人材の育成に注力しているのが、琉球大学である。特に、工学部 情報工学科はコンピュータ技術者や半導体回路設計者などの育成を主な使命としており、沖縄県の産業を支える意味でも非常に重要な役割を担っている。
このような使命がベースにあるだけに、同科の教育方針は非常にユニークだ。
「当学科では、インターネットの入口としてのサーバが使いこなせるよう、仮想的なサーバ環境の構築やセキュリティ対策等も含めた実践的な運用管理手法などを学生に身に付けてもらうことが目標の1つ。これまで約50台のサーバを学生間で共有させていましたが、サーバやネットワークの実際の環境を自由に触らせるには、学生一人ひとりに一台のサーバを割り当てたいと以前から考えていました」と工学部 情報工学科で准教授を務める河野 真治氏は語る。
こうした考えが現実化したのは、2006年に迎えた設備更新のタイミングだった。学生数に見合う180台のサーバを導入することが決定。具体的な機種選定を進めていくことになった。
情報工学科では、3年生の実験の一環、つまり正規のカリキュラムの一部として、「サーバー班」という学生主体のグループが学科システムの構築と運用を担当している。今回のシステム選定では、このサーバー班が中心となって、様々なベンダーのラックマウントサーバの候補を徹底的に評価した。
特にポイントとなったのは、今回のシステムが“1人1台環境”である点。学生各々がサーバをいつでも自由に利用できるよう、RAID1構成のHDD搭載によって信頼性を高めること、ネットワーク経由でOSのインストールを含めたサーバ管理を行えることが必須条件だった。加えて、PCクラスタでの利用も想定していたため、高いパフォーマンスも重要な要件となっていた。一方では、通常の1Uサーバでは消費電力が大きく、サーバ室内の電源工事が必要なことが判明。また、発熱量の問題から空調設備にも不安があった。
「サーバ室は、施設の都合から大規模な電源増強工事ができません。180台ものサーバを入れるわけですから、一台あたりの最大消費電力をできるだけ抑える必要がありました。また、設置スペースも限られているので、いかにラックへの集約率を高められるかが重要となりました」と河野氏は話す。
要件をすべて満たす最適なハードウェアがなかなか見つからない中で、NECが提案したのが『iモデル』と呼ばれるExpress5800シリーズの1Uハーフサーバ(Express5800/i110Rb-1h)だった。「各社の1Uサーバを比較検討する中で、1Uハーフサーバの省スペース性や低消費電力である点が気に入り、実機を見せてもらいました。冷却効率や高密度実装の観点から、筐体や内部構造も適切な設計がなされていると実感し、本格的な検討に入りました」と河野氏は語る。
Express5800/iモデルは、主にデータセンターでの利用やPCクラスタ(並列コンピュータ)の計算ノードとしての利用を目的に開発されたNEC独自の1Uハーフサーバ。奥行き寸法が355mmと短いため、ラックの前後両側から搭載することが可能だ。今回のような180台という大量のサーバでも、ラック6本で余力を持って搭載できる程の集約率の高さを誇る。また、課題となっていた消費電力についても、1台あたり1A程度(通常の1Uサーバの1/3程度)であるため、条件を十分にクリアできる。
これに加え、Intel Virtualization Technology(VT)をサポートするCore Duoプロセッサが搭載されている点も採用を後押しした。オープンソースの仮想マシンモニタ「Xen」を動作させることを想定、導入後の活用範囲がさらに広がると判断したのだ。
| ■琉球大学で構築された新システムのイメージ |
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| 180台のサーバはネットワークスイッチを挟んでNATで運用されている。各サーバでは仮想マシンモニタのXenとFedora Coreが動作し、情報工学科の学生一人ひとりに割り当てられている。 |
180台のサーバは2007年3月に設置、その後サーバー班によるシステム構築が進められ、4月から稼動を開始した。構築の際、中心的な役割を果たしたのは学生達だったという。
「効率的なシステム構築方法を探らせるために、学生自身の手でやらせました。NECの1Uハーフサーバはアーキテクチャが素直な上、OSのインストール方法を学生があれこれ工夫してくれたこともあり、スムーズに行うことができました。彼らにとってもいい経験となったようです」と学生の指導を行った同学科の長田 智和氏は述べる。
新システムのOSにはオープンソースのFedora Coreを採用し、その上で、Xenを用いた仮想環境を実現。PCクラスタとしての使用と、学生一人ひとりのサーバとしての使用を両立させている。また、ネットワーク管理ツールにIPMIを実装し、遠隔から各サーバの再起動などが行えるようになっている。
「導入して数ヶ月が立ちましたが、非常に安定して稼働しています。また、導入して驚いたのはファンの動作音が思った以上に静かな点。おかげでサーバ室の中でも、簡単なミーティングを支障なく行えます」と河野氏は満足気に話す。
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| サーバ室に設置された180台のハーフサーバ。1本のラックに前後から搭載し、180台搭載しても、スペースに十分な余裕がある。 |
現在、同学科では、180台のサーバを様々な形で活用できるようにカリキュラムの見直しを検討。さらに今後は運用方法を拡大していくことも視野に入れている。具体的には、平日は学生教育用の基盤として、週末や夜間は研究用のPCクラスタノードといった活用を考えているという。
「クラスタ環境を構築して代表的なLinpackベンチマークを走らせたところ、現時点で180GFLOPSの性能が得られています。Linpackは極めて負荷の高いベンチマークプログラムですが、システム全体は非常に安定していてトラブルはありません。今後はチューニングを進めて300GFLOPSを狙っていく予定です」と同学科の當間 愛晃氏は述べる。
教育用だけでなく、研究用など様々な活用方法が広がりつつある琉球大学の新システム。近い将来、このシステムでサーバのスキルを身に付けた学生が、数多く巣立っていくことになるだろう。
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