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まえがき

 オープンソースであるLinuxカーネルは、ソースコードや情報がすべて公開されており、誰でも自由に利用できます。しかしながら実際には、Linuxカーネルのコードは膨大で非常に複雑で、簡単には手を出すことができません。そこで、そのような方々の手助けになるよう、Linuxカーネルについて雑誌の連載記事として解説を始める決意をしました。

 この記事は、「Linuxカーネル2.6解読室」という名で、UNIX USER誌とオープンソースマガジン誌にまたがり、結局2年近くにわたり連載を続けることになりました。日本語だけでなく、英語にもほとんど情報のないTCP/IPスタックの実装にも深く突っ込んで解説しました。その連載も2006年2月号をもって、当初の目標であった、Linuxカーネル2.6全体の網羅的な解説を達成し、一区切り付けることができました。

 しかし、連載を続けている間も、Linuxカーネルは精力的に開発が続けられていました。そのため、同じメジャーバージョンのLinuxカーネル2.6でありながら、連載当時の解説とは動作や実装が異なってしまった機能がかなりあります。そこで、連載当時の記事全般をLinuxカーネル2.6.15をベースに見直し、単行本として出版することを決意しました。また、連載では触れることのできなかったことについて、新しい章も追加することにしました。LinuxカーネルがCPUアーキテクチャに大きく依存している部分を取り上げて解説します。アーキテクチャの代表としては、x86とXenアーキテクチャを選びました。

 本書は、今後も長く利用できるものに仕上がったと自負しています。このような機会を与えてくだささった、編集部の方々に、執筆陣一同から感謝申し上げます。

執筆陣代表 高橋浩和