本稿ではNECの「Express5800/S70」の分解レビューをお届けします。S70は、ユーザーが構成をカスタマイズする(オプションパーツを自分で選び、自分で組み込んで利用する)ことを前提に開発された低価格/高品質なPCサーバで、NECではこれを“フレームサーバ”と呼んでいます。低価格といっても基本となる部分は上位機種と共通の部品を使っていたりして作りはかなりしっかりしています。
このS70、NEC得選街での通常価格は73,290円なのですが、キャンペーン期間中は半額以下の36,540円で購入できます(キャンペーンは10月31日までの予定)。次項でスペックを紹介しますが、デスクトップ向けハイエンドチップセットのIntel X38 Expressを搭載しており、拡張性も高いのでなかなかお買い得です。とは言っても純正のオプションパーツを追加していくとそれなりの値段になってしまうので、本稿では(保証対象外となってしまいますが)PCパーツショップで購入したメモリやHDDを追加してLinuxワークステーションを構築してみることにします。
まずは、最小構成のS70の主なスペックを紹介しておきます(より詳しい仕様についてはNECの製品情報ページをご覧ください)。
Intel X38 Express(以下、X38)はPCI Express 2.0規格に対応し、フルレーンのPCI Express x16スロットを2つまでサポートするデスクトップPC用のハイエンドチップセットです。一世代前のチップセットですが現行のハイエンドチップセットのX48は、X38のFSB対応クロックを1,600MHzに引き上げ、DDR3-1600メモリへの対応を追加したものなので、FSB 1,600MHzに対応したハイエンドCPUやDDR3-1600メモリを使わないのであれば両者に違いはないと言ってよいでしょう。ちなみにX38は、FSB 1,333MHz、DDR3-1333までの対応になっています。
なぜサーバでECCメモリが使われるのか |
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デスクトップPCでECCメモリが使われることはまずありませんが、大抵のサーバ専用機はECCメモリに対応しています。メモリは半導体部品なので、HDDのような可動部を持つ部品よりも故障率が低く、初期不良を除けば使用途中で壊れることはあまりありません。ではなぜ、サーバでは高価なECCメモリが使われているのでしょうか。それは物理的に壊れていないメモリでもメモリエラーが発生することがあるためです。その主な原因は、二次宇宙線(地球に降り注ぐ宇宙線が何らかの物質と衝突することで生じる放射線)がメモリセルを通過する際にビット値を変えてしまうことによるものとされています。二次宇宙線がメモリに入射する可能性はかなり低いのですが、メモリの内容が書き換えられてしまうと誤った計算結果が出たり、システムがクラッシュしたりすることになります。デスクトップPCならシステムの再起動で済む話ですが、連続稼働が求められるサーバではそうした事態を避けるためにECCメモリが使われているのです。 |
さて、スペックで気になるのは、対応メモリが“ECC付き”となっている点です。ECCは「Error Check and Correct」の略で、メモリエラーを検出し訂正する機能のことです。当然、ECCメモリのほうが信頼性が高いのですが、通常のPC用メモリよりも高価です。通常のメモリは1GBのモジュールが2,000円ちょっとで購入できますが、ECCメモリの1GBモジュールは少なくとも1万円はします。そのため、低価格サーバをベースに安価に高性能デスクトップマシンを仕立てるのが目的の場合、いくら本体が安く買えたとしてもECCメモリしか利用できないのであれば目的は達成できません。ただし、ECCメモリ対応と記載されていても、ECCメモリが必須のこともあれば、ECCメモリとECCなしメモリの両方が使えることもあります。この点については、本稿で後ほど検証します。
このほかの項目では、ネットワークチップにIntelの製品が使われている点は、信頼性重視のサーバらしいところです。一方、サーバ専用機ではサウンド機能が搭載されていないことが多いのですが、本機にはIntel HD Audio対応のサウンドチップがオンボード搭載されているため、デスクトップPCとして利用する際には重宝します。
ちなみに、動作確認OSの欄に多数のLinuxディストリビューションが記載されていますが、S70の詳しい動作確認情報はNEC 8番街の以下のページにまとめられています。
8番街 > Express5800/S70 > 動作確認情報
http://www.express.nec.co.jp/linux/distributions/confirm/s.html
上記のページには、たとえばDebian GNU/Linux 4.0r3の場合、/etc/X11/xorg.confを書き換えてnvドライバではなくvesaドライバを使うようにしないとX Window Systemが起動しないといった細かな注意点まで記載されています。導入予定のディストリビューションが動作確認OSに含まれている場合はもちろんですが、そうでない場合もトラブル発生時に参考になるので、事前に目を通しておくとよいでしょう。
それでは付属品から見ていくことにしましょう。S70の付属品は以下のとおりです。
図1からもわかるように付属品は非常にあっさりしています。キーボードとマウスがPS/2接続なのがいかにもサーバ仕様といったところでしょうか(USB接続よりもPS/2接続のほうがトラブルが少ない)。
なお、余分なネジ類は付いていませんので、自分でHDDを増設する場合は別途ネジ(インチネジ)を用意してください。自作に馴れたユーザーならインチネジ、ミリネジを一通りストックしていると思いますが普段PCの中をいじらない人は注意が必要です。また、HDD接続用のSATAケーブルも1本しか付属してませんので、2台以上のHDDを搭載する場合は追加のケーブルも必要になります。